「ひょっとして四十肩・五十肩かも?」と思ったら読む話
「腕を上げると痛い」
「腕が上がらない」
そんな症状を聞いて、一番最初に思い当たるのが四十肩・五十肩ではないでしょうか。
ただ、来院される患者さんの話をよく聞いていると、自己判断で四十肩だと思い込んでいたり、半端な知識から症状を長引かせてしまっていることがあります。
ではあらためて、四十肩・五十肩とは何なのか考えてみましょう!
四十肩・五十肩ってなんだ?
五十肩をウィキペディアで調べると、正式な疾患名は「肩関節周囲炎」と出てきます。
「肩関節周囲炎」をわかりやすく言いますと
「肩関節のあたりに炎症が出てるね~。
(炎症があるということは損傷がある)
だから痛くて、うまく動かせないんだよ」
ってことになります。
全然難しくないですね!
ここでポイントになるのは「肩関節のあたり」で、損傷の場所や原因がはっきりわかっていると別の疾患名になります。「腱板損傷」や「石灰沈着性腱板炎」がそうで、以前はこれらも五十肩と呼ばれていました(今は五十肩には含みません)。
また四十肩・五十肩は40代~50代の方のものと思われがちですが、実は年齢による区切りはあまりアテになりません。
そもそも四十肩という名称も後からできたものです。初めは(50代に多い)五十肩という呼び名だけがありました。それが40代に見られることも多くなり、四十肩という呼び名が生まれたのです。
さらに最近では、30代から四十肩・五十肩の症状を訴える方が出始めています(さすがに「三十肩」は生まれないと思いますが…)。しかしその一方で、60代~70代で症状の出る方もいるわけで、年齢は本当に基準になりません。
年齢に関わらず「肩関節が痛くて、うまく動かせない」時には、まずは四十肩・五十肩を疑ってみてください。
「放っておけば治る」は本当?
四十肩・五十肩を経験された方の中には「特に何の治療もしなかった」という方がいます。
たとえ病院にかかって医師の診断と処置を受けていても「何もしなかった」という方がいます。
そして「放っておけば治った」と…
これは本当でしょうか?
それとも何もしなかったと思っているだけなのでしょうか?
正解は本当であり、勘違いです。
表現の仕方を正すなら「安静にしていたら治った」です。
医師の診断を受けて、五十肩だと言われただけで何もしてもらえなかったと思っていても、必ず言われているはずです。「安静にしてください」「お大事に」と。
この指示は全く間違っていませんし、実際それで治るはずなのですが、患者さんからすると「特に何の治療もしないで、放っておいたら治った」という印象になってしまうようです。
そんなわけで周りの方から「放っておけば治るよ」と言われても、言葉半分に受け止めておいてください。
四十肩・五十肩を治すには「安静にすること」が大切です。
安静とは、身体を動かさないで静かにしていることです。
四十肩・五十肩でいえば、腕を動かせる範囲が狭くなっているはずですので、無理に肩を回したり、痛みを我慢して物を持ったりしないことです。
痛みは身体からのSOSです。「お大事に」してください。
安静期とリハビリ期
さて。
「安静にしてたら治った」という方がいる一方で、「痛くても動かさないと治らない」という方もいます。
これも半分正しい誤解で、痛くても動かさなくてはならないのは、四十肩・五十肩のリハビリ期になります。
そう! 四十肩・五十肩には、安静期とリハビリ期があるのです!
- 安静期
- 炎症による痛みのある期間。安静を心がけて、まずは損傷を治すことを目指す。
- リハビリ期
- 損傷が治り、痛みが落ち着いた状態。リハビリをして可動域を広げる期間。
安静期は痛みが軽い場合で1~2か月ほど、痛みが重い場合になると3~6か月ほどになります。この間、腕を使っている時はもちろん安静にしている時にも激しい痛みがあります。安静期の間にゆっくり時間をかけて痛みが和らいでいきます。
その後、痛みが減っていくのと入れ替わるように、肩関節の動きがぎこちなく感じるようになります。痛くて動かせないことはないけれど、思ったよりも腕や肩が上げられない、回せないといった感じです。この状態になってようやくリハビリをスタートすることができます。リハビリの期間は軽ければ半年程度、重い場合で1年~1年半ほどの長丁場になります。
大切なのは、今が安静期なのか、リハビリ期なのかをきちんと見極めて、適切な時期にリハビリを開始することです。
それまでは絶対に無理な使い方をしてはいけません!
安静期での無理な運動は、痛みのある時間をむやみに延ばすだけになってしまいます。
自己判断せず、まず受診を
今回は四十肩・五十肩の誤解されやすいポイントについてまとめてみました。
最後に四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)かどうかの判断ですが、疑わしいと思ったらまずは受診されることをお勧めします。
受診先は、基本的には整形外科になります。
ただし肩の痛みの治療として、健康保険を使って整骨院にかかることもできます。
整形外科 | 整骨院 |
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ただし、整形外科を受診した後、同じ月に整骨院で同じ部位を健康保険を使って治療することはできません(整骨院→整形外科はOK)。
というわけで、上記にあげたような整形外科のメリットを重視しないのであれば、一度整骨院に行って先生に相談されてもいいかと思います。
「四十肩・五十肩かも?」と思ったら、まずは整形外科か整骨院に相談してみてくださいね。